鎌倉の古民家や現代的な住宅を活用した民泊事業は、観光客に人気があります。しかし、住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)に基づく適正な運営には、様々な義務やルールがあることをご存知でしょうか?そのなかでも「標識の掲示」は、民泊事業者が必ず守らなければならない重要な義務の一つです。

民泊標識は単なる看板ではなく、その施設が適法に届出・許可を受けた民泊施設であることを示す公的な印です。標識がなければ、近隣住民や宿泊者に対して、違法な民泊ではないかという不安や疑念を抱かせてしまう恐れがあります。また、標識掲示は法令で定められた義務であり、これを怠ると行政指導や罰則の対象となる可能性もあります。

今回は、鎌倉エリアで民泊事業を営む際に知っておくべき、民泊標識に関する基本的な知識と設置のポイントについて詳しく解説します。

この記事を読むとわかること

  • 民泊標識の掲示が法律で義務付けられている理由
  • 民泊の形態によって異なる標識の種類と特徴
  • 標識を掲示する際の具体的な場所と方法
  • 標識掲示に関するよくある質問と回答
  • 標識掲示以外にも注意すべき民泊運営のポイント

民泊標識は法律で掲示が義務付けられている

住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)第13条では、民泊事業者に対して届出住宅ごとに標識を掲示することを義務付けています。この規定に違反した場合、罰則として30万円以下の過料が科される可能性があります。

なぜ標識掲示が義務付けられているのか?

標識掲示の義務化には、主に以下の目的があります:

合法的な民泊施設であることの証明

標識には都道府県等から交付された届出番号が記載されており、適法に届出がなされた民泊であることが証明されます。

宿泊者への安心提供

民泊の届出番号とは、法律に定める要件、条例による制限をクリアした証です。宿泊予約時に確認した届出番号と実際の施設の標識に記載された番号が一致することで、宿泊者は安心して利用できます。

近隣住民への配慮

標識には管理者の連絡先も記載されているため、トラブルや苦情があった場合の連絡先が明確になります。特に住宅地での民泊の場合、近隣住民の意見は民泊を続ける上でとても大切です。傾聴の心を忘れず、真摯に対応しましょう。

無届民泊との区別

適法な民泊と無届の違法民泊を明確に区別するための手段ともなっています。

神奈川県の「住宅宿泊事業の適正な運営に関する指導指針」にも、標識の掲示について詳細な規定がされています。鎌倉エリアで民泊を運営する場合は、これらの規定を遵守することが求められます。

民泊の形態別に見る標識の種類と特徴

民泊の運営形態によって、標識の内容や表示すべき情報に違いがあります。ここでは、主な3つの形態に分けて解説します。

家主居住型の標識

家主居住型(宿泊者が滞在する間、家主が届出住宅に同居する形態)の標識には、以下の情報が記載されています。

 標識に記載されている情報

  • 届出番号
  • 届出年月日

家主居住型は、緊急時に家主が対応できるため、常時連絡可能な電話番号の記載は必須ではありませんが、神奈川県では連絡先を記載することが望ましいとされています。

出典:住宅宿泊事業について - 神奈川県ホームページ

家主不在型の標識(事業者が管理を自分で行う場合)

家主不在型(宿泊者が滞在する間、家主が不在となる形態で、住宅の管理は事業者が行う場合)の標識には、家主居住型の情報に加えて、以下の情報が必須となります

 標識に記載されている情報

  • 対象物件の届出番号
  • 住宅宿泊管理業者の氏名(法人の場合は名称)
  • 24時間対応可能な連絡先(電話番号)

家主不在型では、緊急時の対応や苦情対応のため、常時連絡可能な窓口が必要となるため、この情報の記載が義務付けられています。

出典:住宅宿泊事業について - 神奈川県ホームページ

委託管理型(管理業者に管理を委託している場合)の標識

家主不在型で住宅宿泊管理業者に管理を委託している場合、管理業者が届出住宅に掲示する標識には、以下の情報が含まれます:

 標識に記載されている情報

  • 対象物件の届出番号
  • 届出年月日
  • 住宅宿泊管理業者の商号、名称または氏名
  • 住宅宿泊管理業者の登録番号
  • 住宅宿泊管理業者の苦情等の連絡先

これにより、宿泊者や近隣住民は、実際に管理業務を行っている事業者に直接連絡することができます。

出典:住宅宿泊事業について - 神奈川県ホームページ

なお、これらの標識は国土交通省令・厚生労働省令で定められた様式に従って作成する必要があります。自作のものではなく、正規の様式を使用しましょう。また、Webサイトを作成している場合には、サイト上での標識掲示が推奨されています。

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標識を適切に掲示するための重要ポイント5選!

民泊標識の掲示方法には、いくつかの重要なポイントがあります。神奈川県の指導指針に基づく具体的な掲示ポイントを紹介します。

1. 公衆が認識しやすい位置に掲示する

標識は、届出住宅の門扉、玄関(建物の正面の入り口)など、公衆が認識しやすい位置に掲示する必要があります。具体的には、概ね1.2メートル以上1.8メートル以下の高さが推奨されています。

特に鎌倉のような観光地では、宿泊者が施設を見つけやすいよう、通りから見える位置に設置することが重要です。ただし、景観に配慮した掲示方法も検討しましょう。

2. 共同住宅の場合の追加的な掲示

マンションやアパートなどの共同住宅で民泊を行う場合は、個別の住戸への掲示に加えて、以下の場所にも簡素な標識を掲示することが望ましいとされています。

  • 共用エントランス
  • 集合ポスト
  • その他の公衆が認識しやすい箇所

この追加掲示により、マンション全体の住民や訪問者に対して、適法な民泊が行われていることを示すことができます。

3. 耐久性のある素材で作成・加工する

標識は屋外に掲示することが多いため、風雨に耐える素材で作成する必要があります。神奈川県の指導指針では、「ラミネート加工等の風雨に耐性のあるもので作成または加工を施すこと」と明記されています。

また、破損等により文字が認識できなくなった場合は、速やかに補修等を行うことも求められています。標識の状態は定期的に確認し、必要に応じてメンテナンスを行いましょう。

4. 戸建て住宅での特別な配慮

戸建て住宅の場合、特に以下のような状況では追加的な配慮が必要です:

  • 二世帯住宅等で玄関が複数ある場合
  • 事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一の敷地内にある場合
  • 門扉から玄関まで離れている場合

このような場合、公衆にとって見やすい箇所に、住宅宿泊事業を実施している旨と届出番号、および家主不在型の場合は常時連絡可能な連絡先を記載した標識を追加で掲示することが求められています。

5. 分譲マンションにおける掲示場所への配慮

分譲マンション(住宅がある建物が二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの)で民泊を行う場合は、標識の掲示場所等の取り扱いについて、予め管理組合と相談することが推奨されています。

管理組合によっては掲示場所に関するルールが定められている場合もあるため、トラブルを避けるためにも事前の確認と相談が重要です。

標識掲示に関するよくある質問

標識はどこでもらえますか?自分で作成するのですか?

標識の入手方法は自治体によって異なります。弊所で紹介したものは神奈川県が提供するもので、鎌倉を含む神奈川県では、届出時に標識の様式が提供されることが一般的です。詳細については、届出先の自治体窓口にお問い合わせください。なお、標識の様式は法令で定められており、自作する場合も正式な様式に従う必要があります。

休業中や、賃貸物件として人が入居している間も標識の掲示は必要ですか?

はい、必要です。住宅宿泊事業者は、休業中や賃貸物件として人が入居している期間も含め、事業の廃止を行わない限りは、標識の掲示が必要となります。標識は届出住宅の適法性を示すものであり、実際に宿泊者がいるかどうかに関わらず掲示する義務があります。

ウェブサイトにも標識情報を掲載する必要がありますか?

法律上の義務ではありませんが、神奈川県の指導指針では、ウェブサイトを作成している場合は、当該ウェブサイト上でも標識を掲示することが望ましいとされています。これにより、宿泊予約前の段階で宿泊者に対して適法な民泊であることを示すことができます。

標識が風雨で破損した場合はどうすればいいですか?

標識が破損して文字が認識できなくなった場合は、速やかに補修または再発行の手続きを行う必要があります。神奈川県の指導指針では、「破損等により文字が認識できない場合は速やかに補修等を行うこと」と明記されています。

標識を掲示しなかった場合のペナルティはありますか?

住宅宿泊事業法第13条では標識の掲示が義務付けられており、これに違反した場合は、同法第76条により30万円以下の過料に処される可能性があります。また、行政指導の対象となり、改善命令等が出される可能性もあります。

まとめ:適切な標識掲示で安心・安全な民泊運営を

民泊標識の掲示は、単なる法律上の義務ではなく、適法な民泊運営の象徴であり、宿泊者や近隣住民に安心を提供するための重要な取り組みです。鎌倉で民泊事業を成功させるためには、この基本的な義務をしっかりと果たすことが第一歩となります。

具体的には、以下のポイントを押さえておきましょう:

  1. 民泊の形態(家主居住型・家主不在型・委託管理型)に応じた適切な標識を用意する
  2. 公衆が認識しやすい位置に掲示する
  3. 共同住宅の場合は追加的な掲示も検討する
  4. 風雨に耐える素材で作成・加工し、定期的にメンテナンスする
  5. 分譲マンションでは管理組合と事前に相談する
  6. 掲示義務を怠った場合、罰則を受ける可能性がある

標識掲示はもちろん、他の法律上の義務や地域特性に応じた運営戦略、安全・衛生面の管理、近隣住民とのコミュニケーションなど、様々な要素が民泊事業の成功に影響します。

民泊事業は魅力的な収益機会ですが、法律や規制は複雑で、地域によっても異なります。特に鎌倉では、観光地としての特性や古民家の活用など、特有の課題もあります。

専門家に相談して安心の民泊事業を始めませんか?

民泊事業の開始や運営でお悩みの方は、専門家への相談をおすすめします。当事務所では、鎌倉エリアの民泊事業に精通した行政書士が、届出手続きから運営のアドバイスまで、トータルでサポートいたします。

特に以下のようなお悩みがある方は、お気軽にご相談ください:

  • 民泊の届出手続きや必要書類について知りたい
  • 鎌倉エリアでの民泊運営の規制や特徴を詳しく知りたい
  • 標識掲示以外の法律上の義務について確認したい
  • 家主不在型の民泊を検討しているが、管理業者選びで迷っている

民泊事業の成功には、法律に則った適切な運営が欠かせません。専門家のサポートを受けることで、安心して事業をスタートし、長く続けていくことができます。

まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。鎌倉の民泊事業成功に向けて、全力でサポートいたします。

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