はじめに

民泊を始めようと思った時、「宿泊者名簿って何を書けばいいの?」「外国人のお客さんの本人確認はどうするの?」と疑問に思うことがありますよね。実は、宿泊者名簿は民泊運営の基本中の基本。きちんと記録しておかないと、あとで大変なことになるかもしれません。この記事では、鎌倉や葉山、逗子エリアで民泊事業を始めようと考えている方に向けて、民泊専門の行政書士が宿泊者名簿の正しい作り方と管理方法をわかりやすくご説明します。

この記事を読むとわかること

  • 宿泊者名簿に必ず記載すべき項目
  • 本人確認の正しい方法 宿泊者名簿の保管場所と保存期間
  • 電子データで宿泊者名簿を作成する際の注意点
  • 外国人宿泊者の本人確認と旅券(パスポート)の扱い方
  • 警察からの閲覧請求への対応方法

宿泊者名簿とは

宿泊者名簿は、単なる「お客さんリスト」ではありません。住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく法的な義務として、すべての民泊事業者に作成が求められています。誰がいつ泊まったのかを正確に記録する大切な書類です。

この名簿は、防犯や公衆衛生の管理に役立つだけでなく、万が一の事故や災害時には「誰が滞在していたか」を確認する重要な記録になります。鎌倉のような観光地では、特に外国からのお客さんも多いため、正確な情報管理が求められています。

宿泊者名簿に記載する項目

宿泊者名簿には、次の項目を漏れなく記載する必要があります。

日本人宿泊者の場合

  • 宿泊者の氏名(フルネーム)
  • 住所
  • 職業
  • 宿泊日

外国人宿泊者の場合

  • 宿泊者の氏名(フルネーム)
  • 住所
  • 職業
  • 宿泊日
  • 国籍
  • 旅券(パスポート)番号

宿泊者名簿は「代表者だけ」の記載では不十分だということ。グループで来た場合でも、全員分の情報を記録する必要があります。家族旅行や友達同士の旅行でも、子どもさんも含めて全員の情報が必要です。

また、宿泊契約(宿泊グループ)ごとに宿泊者が分かるように記載することも求められています。例えば、Aさんファミリー4人とBさんカップル2人が同じ日に宿泊する場合、それぞれのグループが分かるように記録しましょう。

宿泊者名簿の保管場所と保存期間

宿泊者名簿は、次のいずれかの場所に保管する必要があります:

  1. 届出住宅(民泊を行う家)
  2. 住宅宿泊事業者の営業所または事務所

名簿は3年間保存する義務があります。また、都道府県知事から求められた場合には提出しなければなりません。

電子データで管理する場合の注意点

紙の時代は終わり、多くの方がパソコンやタブレットで宿泊者情報を管理したいと思うでしょう。法律でも電子データでの作成・保管が認められていますが、「紙で出力可能な状態」にしておく必要があります。

具体的には:

  • データが破損しないようバックアップを取る
  • いつでも印刷できる状態を維持する
  • セキュリティ対策をしっかり行う(個人情報漏洩防止)

政府公式の電子宿泊者名簿ソフトが利用可能

実は、国土交通省・観光庁が「電子宿泊者名簿」というソフトウェアを無料で配布しています。これを使うことで、住宅宿泊事業法で定められた宿泊者名簿と、2ヶ月毎に必要な定期報告データを簡単に作成できます。

システム動作条件

項目内容
サポートするOS
【Windows版】
Microsoft Windows 10 (64bit)
【動作条件】メモリ容量:2GB以上
画面解像度:1366×768以上
空きディスク容量:200MB以上
ご利用条件
※ご利用条件に同意できない場合には、電子宿泊者名簿を利用しないでください。
・電子宿泊者名簿を使用した結果、損害が発生しても国土交通省、観光庁は一切の責任を負いません
・電子宿泊者名簿に関するいかなる著作権表記も変更できません
・電子宿泊者名簿を改造したり、リバースエンジニアリング、逆アセンブル等を行うことはできません
・電子宿泊者名簿の再配布はできません

宿泊者名簿の項目一覧

項目内容
宿泊開始日宿泊開始日
開始時刻宿泊開始日の開始時刻
宿泊終了日宿泊終了日
終了時刻宿泊終了日の終了時刻
宿泊日数宿泊期間。各宿泊日は12:00を起点として24時間を一日とカウントします
種別宿泊者の種別(代表者または同行者)
グループ識別当該宿泊日におけるグループ(代表者と同行者の組合せ)の識別
宿泊者氏名宿泊者の氏名
住所宿泊者の住所
職業宿泊者の職業
国籍宿泊者の国籍。日本に住所を有している外国人については「日本」と分類
旅券番号宿泊者の旅券番号。国籍が「日本」以外の場合、入力が必要です

特に便利なのは、複数の届出住宅を管理している場合でも、届出番号ごとに宿泊者名簿を作成し管理できる点です。鎌倉に複数の民泊物件を持っている方には特に助かる機能ですね。

定期報告も簡単に

民泊を運営していると、2ヶ月毎に宿泊日数等を報告する義務があります。この定期報告は通常、民泊制度運営システムにログインして直接入力するか、CSVファイルをアップロードして行います。電子宿泊者名簿ソフトを使えば、入力された宿泊者名簿をもとに定期報告データ(CSVファイル)を自動で作成できます。手作業でデータを集計する手間が省けるので、時間短縮にもつながります。

項目内容
届出番号届出番号(例:"M011234567")
報告対象期間報告対象期間(例:"2023_4-5")
宿泊日数宿泊日数(例:"3")
宿泊者数宿泊者数(例:"4")
延べ人数延べ人数(例:"10")
国籍宿泊者の国籍人数(以下国籍毎の当該報告対象期間の宿泊者数)
日本、韓国、台湾、香港、中国、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、米国、カナダ、オーストラリア、その他
宿泊日当該宿泊日(例:"2023/4/6, 2023/4/7, 2023/4/8")

利用時の注意点

ソフトウェアを使用した結果、損害が発生しても国土交通省・観光庁は責任を負いません。また、ソフトの改造や再配布は禁止されています。

それでも、政府公式のソフトウェアなので安心して利用できますし、何より無料で使えるのは大きなメリットです。民泊の電子化を検討している方は、まずはこの公式ソフトを試してみることをお勧めします。

出典:電子宿泊者名簿・定期報告方法

本人確認の正しい方法

名簿に正確な情報を記載してもらうため、宿泊者の本人確認をしっかり行う必要があります。これは「宿泊行為の開始まで」、つまりチェックインの時点で済ませておきましょう。

本人確認の方法

本人確認は「対面」または「対面と同等のICT(情報通信技術)を活用した方法」で行います。

対面での確認

実際に会って、身分証明書や旅券(パスポート)を確認する方法です。

ICTを活用した確認

次の条件を両方満たす方法であれば、オンラインでの本人確認も可能です:

  1. 宿泊者の顔と旅券(パスポート)が画像で鮮明に確認できること
  2. その画像が民泊施設内または近くから発信されていることが確認できること

例えば、届出住宅に設置したタブレットやテレビ電話で本人確認を行うといった方法が考えられます。スマートロックと連動したシステムを導入している民泊施設も増えていますね。

外国人宿泊者の本人確認

外国人のお客さんには、特に注意が必要です:

  1. 旅券(パスポート)の提示を必ず求める
  2. 宿泊者名簿の国籍、旅券番号欄への記載を徹底する
  3. 旅券のコピーを取って宿泊者名簿と一緒に保存する

*コピーを取れば、名簿への「氏名・国籍・旅券番号」の記入を省略できる

もし外国人宿泊者が旅券の提示を拒否した場合は:

  1. まずは旅券の呈示が「国の指導による必要な手続き」と外国人に対し説明し、呈示を求めます。
  2. それでも拒否する場合は「旅券不携帯の可能性がある」として最寄りの警察署に連絡するなどして対応する。

外国人旅行者に押し切られてしまい、宿泊者名簿に不備が生じると、最終的に事業者側に説明、罰則が科せられる場合があるので、毅然と対応しましょう。

宿泊者名簿作成時の注意点

全員分の記載が必要

繰り返しになりますが、宿泊者名簿には代表者だけでなく全員の情報を記載する必要があります。「代表者のみの記載は認められません」と法律にはっきり書かれています。

例えば、家族4人で宿泊する場合:

  • お父さん、お母さん、子ども2人の計4人分すべての情報が必要
  • 「山田家4名」といった記載では不十分

宿泊グループごとの記載

同じ日に複数のグループが宿泊する場合は、グループごとに分けて記載します。

【宿泊日:2025年5月22日】
■グループ1
田中太郎(住所・職業・・・)
田中花子(住所・職業・・・)

■グループ2
鈴木一郎(住所・職業・・・)
佐藤次郎(住所・職業・・・)

このように整理すると、誰がどのグループで宿泊したかが一目でわかります。

宿泊者名簿に関する罰則

住宅宿泊事業に定める法令第七六条では八条(宿泊名簿の備え付け)に関し違反したものには、30万円以下の罰金に処るすると明記されています。
a事業者は名簿を備え付け、記載事項を正しく記入させ、管理する責任を負うため、宿泊者名簿に記載する項目にあるものは必ず記載してもらいましょう。

(宿泊者名簿の備付け等)
第八条 住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより届出住宅その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない。

第七六条二項 第八条第一項(第三十六条において準用する場合を含む。)、第十三条、第三十七条第一項若しくは第二項、第三十九条又は第六十条第一項の規定に違反した者

警察への協力について

警察官から職務上の理由で宿泊者名簿の閲覧を求められた場合は、協力する必要があります。

  1. 捜査関係事項照会書(正式な書類)がなくても、閲覧に協力する
  2. 職務の目的に必要な範囲で情報を提供する
  3. この場合の個人情報提供は「個人情報保護法第23条第1項第4号に基づく適正な措置」なので、宿泊者本人の同意は不要

つまり、警察からの協力要請には応じる義務がありますが、提供するのは「必要な範囲」の情報だけで構いません。この範囲については判断が分かれるところですが、個別事案なのでここでは言及しないこととします。

長期滞在者への対応

7日以上の長期滞在の場合は、定期的な確認が必要です:

  1. 清掃や備品補充の際に、不審な人がいないか確認
  2. チェックイン時に確認していない人が滞在していないか注意
  3. 宿泊者が所在不明になっていないか確認
  4. 定期的に面会するなどして状況を把握

特にホテルではなく鎌倉や葉山、逗子などにある民泊を選ぶゲストは長期滞在のお客さんも多いので、こうした定期確認の仕組みを作っておくと安心です。

まとめ:民泊運営で宿泊者名簿を正しく管理するために

宿泊者名簿は、ただの事務手続きではなく、安全で信頼できる民泊運営の基礎となるものです。ポイントをまとめると:

  1. 全宿泊者の情報を正確に記録する(代表者だけではNG)
  2. 外国人宿泊者にはパスポートの提示を求め、コピーを保存する
  3. 名簿は3年間保存し、紙でも出力できる状態にしておく
  4. 長期滞在者には定期的な確認を行う
  5. 警察からの閲覧請求には適切に協力する

鎌倉、葉山、逗子エリアは観光客も多く、外国人宿泊者も増えています。正確な宿泊者名簿の管理は、トラブルを未然に防ぎ、安心して民泊事業を続けるための大切な一歩です。

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