訪日外国人観光客の増加とともに注目を集める民泊ですが、実は日本の分譲マンションの約8割が民泊を禁止しているという事実をご存知でしょうか。

マンションで民泊運営を検討している方、あるいは近隣の違法民泊に悩まされている方にとって、管理規約による民泊禁止の仕組みを理解することは非常に重要です。特に鎌倉、葉山、逗子といった観光地では、民泊需要が高い一方で、住環境を守るための規制も厳しくなっています。

本記事では、マンション民泊禁止の基本から、管理規約の確認方法、トラブル対処法、さらには購入時の注意点まで、行政書士の視点から分かりやすく解説します。

この記事を読むとわかること

  • マンションの8割以上が民泊を禁止している理由
  • 管理規約で民泊が禁止される法的根拠
  • 民泊禁止条文の具体例と確認方法
  • 違法民泊を発見した際の適切な対処法
  • マンション購入時に確認すべきポイント
  • 管理規約変更の手続きと必要な同意割合

マンション民泊禁止の基本知識

マンションで民泊が禁止される理由

分譲マンションで民泊が禁止される主な理由は、「住環境の保護」です。マンションは本来、購入者やその家族が安心して暮らすための共同住宅として設計されています。そこに不特定多数の宿泊者が出入りすることで、騒音問題やセキュリティ上の懸念、ゴミ出しルールの違反など、様々なトラブルが発生する可能性があります。

特に深夜の騒音問題は深刻で、観光目的の宿泊者が夜遅くまで騒いだり、早朝にスーツケースを引きずる音が響いたりすることで、住民の生活に支障をきたすケースが報告されています。また、オートロックが不特定多数に共有されることによるセキュリティリスクも、管理組合が民泊を禁止する大きな要因となっています。

住宅宿泊事業法との関係

2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により、一定の条件を満たせば住宅で宿泊事業を行うことが可能になりました。しかし、この法律は同時に、マンション管理規約で民泊を禁止することも認めています。

住宅宿泊事業法第3条第2項では、届出をする際に「マンション管理規約に住宅宿泊事業を営むことを禁止する旨の定めがない旨」を確認することが義務付けられています。つまり、管理規約で禁止されているマンションでは、法的に民泊を行うことができません。仮に届出をしても受理されず、無断で営業した場合は違法民泊となります。

80.5%のマンションが民泊禁止という実態

マンション管理業協会が実施した調査によると、全国の分譲マンションの80.5%が管理規約で民泊を禁止しており、明確に容認しているのはわずか0.3%に過ぎません。残りの約19%は対応を決めていない状態です。これは騒音などでトラブルが発生するとマンションの価値が下がりかねないという不安が背景にあると分析されています。

参考記事:分譲マンション、民泊禁止が8割超 価値の下落恐れる

管理規約による民泊禁止の法的根拠

国土交通省標準管理規約の内容

国土交通省が定める「マンション標準管理規約」は、多くのマンションが管理規約を作成する際の指針となっています。2017年の改正で、民泊に関する条項が追加され、管理組合が民泊の可否を明確に定めることが推奨されるようになりました。

標準管理規約では、第12条(専有部分の用途)において、区分所有者は「その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と定められています。要するにマンションを買った人が住むために使うもので、人に貸して賃料を得たり、旅館業として運用することは禁止するということが管理規約で禁止されています。

「専ら住宅として使用」条項の解釈

「専ら住宅として使用」という文言の解釈は、民泊禁止の核心部分です。住宅とは、区分所有者やその家族が継続的に居住する場所を指し、不特定多数の他人を有償で宿泊させる民泊は、この定義から外れると解釈されています。

ただし、親族や友人を無償で泊める行為は「住宅としての使用」の範囲内とされ、規制の対象外です。つまり、営利性と反復継続性が、住宅使用と民泊を区別する重要な要素となっています。

区分所有法との関係

マンション管理規約の法的根拠は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)にあります。同法第30条により、管理組合は建物や敷地の管理・使用に関する事項を規約で定めることができます。

区分所有法第6条では、区分所有者の共同の利益に反する行為を禁止しており、民泊による騒音やセキュリティ上の問題は、この「共同の利益に反する行為」に該当する可能性があります。管理規約で民泊を禁止することは、この法的枠組みの中で、区分所有者全体の利益を守るための正当な措置として認められています。

区分所有法第6条 「区分所有者の権利義務等」

区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

民泊禁止条文の具体例と確認方法

標準的な民泊禁止条文のパターン

多くのマンションで採用されている民泊禁止条文には、いくつかの標準的なパターンがあります。最も一般的なのは、「区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業の用に供してはならない」という直接的な表現です。

また、より包括的な禁止条文として、「区分所有者は、その専有部分を宿泊料を受けて他人に使用させる行為(住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業、旅館業法に基づく営業を含むがこれらに限られない)を行ってはならない」という表現も見られます。このような条文は、法律の抜け道を防ぎ、あらゆる形態の有償宿泊サービスを禁止する意図があります。

ブリリアマーレ有明の事例

東京都江東区の大規模マンション「ブリリアマーレ有明」は、民泊禁止を巡る代表的な事例として知られています。このマンション(総戸数1,085戸)では、2015年にAirbnb等を利用した貸し出しを禁止する「シェアハウス規定」を管理規約に追記し、注目を集めました。

この規定では、短期の宿泊(民泊)だけでなく、長期の居住(シェアハウス)まで包括的に禁止しており、当時としては先進的な取り組みでした。このような規約が加わった背景には、豪華な共用施設(プールやスパなど)があるこの物件で、ルールを知らない不特定多数の利用者が増えることで、施設の秩序が乱れ、結果的に資産価値が損なわれる恐れがあったためです。

2016年2月には国の「民泊サービス」のあり方に関する検討会でヒアリングが実施され、この事例は民泊対策を検討する他のマンション管理組合にとって重要な参考事例となっています。

管理規約の入手・確認方法

マンションの管理規約を確認する方法はいくつかあります。まず、所有者であれば、管理組合や管理会社に請求することで、いつでも最新の管理規約を閲覧・複写することができます。これは区分所有法で保障された権利です。

マンション購入を検討している場合は、不動産仲介業者を通じて管理規約の写しを入手できます。重要事項説明の際には、民泊の可否について必ず説明を受けましょう。また、管理会社のウェブサイトで規約を公開しているケースもあります。規約に民泊に関する条項がない場合は、総会議事録も確認し、民泊に関する決議がないか調べることが重要です。

マンション民泊トラブルの実態

出典:民泊の取組事例紹介 | 民泊制度ポータルサイト「minpaku」|住宅宿泊事業者アンケート

最多は騒音問題

観光庁の調査によると、民泊に関する苦情はア騒音問題が最も多い苦情内容となっています。深夜のパーティー、早朝のスーツケースの音、廊下での大声での会話など、生活時間帯の違いから生じる騒音トラブルは後を絶ちません。

特に外国人観光客の場合、文化の違いから日本の住宅事情や騒音に対する感覚が異なることもあり、悪意なく騒音を発生させてしまうケースが多く見られ、一般的な日本の住環境では受け入れがたい状況となっています。

ゴミ問題

ゴミ出しのトラブルも頻発しています。短期滞在者はゴミの分別ルールを理解せず、一般ゴミに出したり、粗大ゴミを放置したりすることがあります。民泊で発生するゴミは事業用のゴミであり産業廃棄物収集業者による収集が原則です。外国人観光客の場合、言語の壁もあってルールの周知が困難で、管理組合や近隣住民の負担が増大しています。

たばこ問題

マンションのベランダ、共有部分での喫煙、その他喫煙が禁止されているエリアで喫煙をすることは、現代の日本の社会において社会的に問題視されています。外国の方が文化の違いから無意識に行う場合もあるため、分かりやすく禁止事項を掲示するなどして理解を促進する必要があります。

資産価値への影響

民泊トラブルが頻発するマンションでは、資産価値の低下も懸念されます。購入希望者が内覧時に民泊利用者と遭遇し、購入を見送るケースや、民泊可能なマンションということで売却価格が下がることも考えられます。

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違法民泊を発見した場合の対処法

違法民泊の兆候とチェックポイント

違法民泊を見分けるポイントはいくつかあります。まず、民泊の届出を行っている事業者は標識の掲示義務があります。この標識が掲示されていない場合は掲示義務違反となりますので直ちに是正が必要です。いつまでも是正されず放置されている状況は、住宅宿泊管理業者への委託を行っていないケースや、そもそも届出自体していない場合があります。もっとも簡単な見分け方なので、怪しいと思ったら確認しましょう。

2025年5月9日民泊

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通報窓口と相談先一覧

違法民泊を発見した場合の通報先は最寄りの保健所となります(管轄が異なる場合あり)。まず、保健所は旅館業法違反の取り締まりを行っており、無許可営業に対する指導権限を持っています。鎌倉市の場合は神奈川県鎌倉保健福祉事務所が窓口となります。

民泊制度コールセンター(0570-041-389)では、違法民泊に関する相談を受け付けており、適切な対処方法のアドバイスを受けることができます。また、警察は違法民泊に関連する犯罪行為(不法侵入、器物損壊など)があった場合の通報先となります。消防署は、防火設備の不備など安全上の問題がある場合の相談窓口です。

管理組合を通じた対応手順

管理組合として違法民泊に対処する場合、まず理事会で状況を把握し、証拠を収集することから始めます。次に、該当する区分所有者に対して、管理規約違反の通知を内容証明郵便で送付します。この際、是正期限を明確に設定し、改善されない場合の措置についても明記することが重要です。

それでも改善されない場合は、総会での決議を経て、使用禁止請求や競売請求などの法的措置を検討することになります。実際に裁判に至ったケースでは、大阪地裁が違法民泊の差し止めを認める判決を出しており、管理組合の正当な権利行使として認められています。ただし、法的措置は最終手段であり、まずは話し合いによる解決を目指すことが望ましいでしょう。

管理規約の変更と手続き

規約変更に必要な手続き(3/4同意)

管理規約を変更して民泊を禁止する場合、区分所有法第31条により、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。

手続きとしては、まず理事会で規約変更案を作成し、総会の議案として提出します。総会の招集通知には、規約変更の内容(議案の要領)を明記し、少なくとも1週間前(規約でより長い期間が定められている場合はその期間)までに各区分所有者に送付する必要があります。総会では十分な討議を行い、賛否を明確にした上で決議を行います。

民泊禁止から容認への変更の難しさ

一度民泊を禁止した管理規約を、後から容認に変更することは非常に困難です。民泊禁止に賛成した区分所有者の多くは、静かな住環境を求めてその決定を支持したため、考えを変える可能性は低いと言えます。

実際に民泊容認への規約変更を試みた事例では、ほとんどが否決されています。特に、一度でも民泊によるトラブルを経験したマンションでは、住民の抵抗感が強く、必要な4分の3の賛成を得ることはほぼ不可能です。このため、民泊を検討している場合は、購入前に管理規約を十分に確認することが極めて重要となります。

新築マンションでの対応

新築マンションでは、分譲開始時点で民泊に関する方針を明確にするケースが増えています。デベロッパーは、購入者層のニーズを考慮して、最初から管理規約に民泊禁止条項を盛り込むことが一般的になっています。

特に高級マンションやファミリー向けマンションでは、「民泊禁止」をセールスポイントの一つとして打ち出すこともあります。一方で、投資用マンションや都心の小規模マンションでは、民泊を容認するケースも稀に見られます。購入検討者は、将来の利用計画を考慮して、民泊の可否を事前に確認することが重要です。

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マンション購入時の注意点

購入前の確認チェックリスト

マンション購入を検討する際、民泊に関して確認すべき項目は多岐にわたります。まず、現行の管理規約に民泊禁止条項があるかを確認します。条項がない場合でも、総会議事録を過去3年分程度確認し、民泊に関する議論や決議がないかをチェックすることが重要です。

次に、実際に民泊が行われていないか、現地確認を行います。内覧時に他の部屋の様子を観察し、キーボックスの有無や外国人観光客の出入りをチェックします。また、管理会社や管理員に民泊に関するトラブルの有無を聞き取ることも有効です。さらに、民泊仲介サイトでそのマンションが掲載されていないか検索することも、重要な確認作業となります。

将来的な規約変更リスク

現在民泊が容認されているマンションでも、将来的に禁止される可能性があることを理解しておく必要があります。実際に民泊トラブルが発生すれば、管理組合で禁止の動きが出てくる可能性が高いでしょう。

投資目的でマンションを購入し、民泊運営を計画している場合は、このリスクを十分に考慮する必要があります。規約変更により民泊ができなくなれば、想定していた収益が得られなくなり、投資計画が大きく狂う可能性があります。そのため、民泊以外の収益モデルも検討しておくことが賢明です。

投資用マンション選びのポイント

民泊運営を前提とした投資用マンションを選ぶ場合、立地条件が最も重要な要素となります。観光地へのアクセスが良く、駅から近い物件は民泊需要が高い傾向にあります。鎌倉、葉山、逗子エリアでは、海や観光スポットに近い物件が人気です。

ただし、住居専用地域では自治体の条例により民泊が制限されている場合があるため、用途地域の確認も必須です。また、管理組合の雰囲気も重要で、若い世代や投資目的の所有者が多いマンションの方が、民泊に対して理解がある傾向があります。一方で、ファミリー層や高齢者が多いマンションでは、民泊への抵抗感が強いことが一般的です。

まとめ

マンションにおける民泊禁止は、住環境を守るための重要な仕組みです。全国の分譲マンションの80.5%が民泊を禁止している現状は、共同住宅における生活の質を維持することの重要性を示しています。

管理規約による民泊禁止は、区分所有法に基づく正当な権利であり、住宅宿泊事業法でも尊重されています。違法民泊によるトラブルは、騒音、セキュリティ、ゴミ問題など多岐にわたり、最終的にはマンション全体の資産価値にも影響を与える可能性があります。

マンション購入を検討している方は、事前に管理規約を確認し、将来の利用計画と照らし合わせて判断することが重要です。また、現在民泊トラブルに悩まされている方は、適切な手順を踏んで対処することで、問題解決への道筋をつけることができます。

民泊に関する法的な問題や手続きについて不明な点がある場合は、専門知識を持つ行政書士にご相談ください。特に鎌倉、葉山、逗子エリアでの民泊に関するご相談は、地域の事情に詳しい専門家のサポートを受けることで、スムーズな問題解決が期待できます。

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