
空室や相続した物件の新たな利用方法として注目される民泊。しかし、「民泊」と「旅館業」の違いや、どちらが自分の物件に適しているのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。本記事では、民泊に強い行政書士が民泊と旅館業の制度背景や、本質的な違いにフォーカスし分かりやすく解説します。
この記事を読むとわかること
- 民泊(住宅宿泊事業法)と旅館業法の基本的な違い
- 営業日数や設備基準など5つの重要な比較ポイント
- 鎌倉・葉山・逗子エリアでの民泊・旅館業経営の特徴
- あなたの物件や投資目的に合った選択方法
- 専門家に相談するメリットと選び方
- 1. 民泊と旅館業の基本的な違い
- 1.1. 民泊(住宅宿泊事業法)と旅館業法の定義と目的
- 1.2. それぞれの法律が生まれた背景と経緯
- 2. 営業方法から見る4つの重要な違い
- 2.1. 1. 営業日数の制限と収益への影響
- 2.2. 2. 立地条件と地域制限の違い
- 2.3. 3. 必要な設備と安全基準の差
- 2.4. 4. 管理体制と責任者の要件
- 3. 鎌倉・葉山・逗子エリアの観光と宿泊事業の特性
- 3.1. 地域特性と観光需要の傾向
- 3.2. 地域別の規制と条例の特徴
- 3.3. 成功事例に見る地域活性化の可能性
- 4. 専門家のサポートを活用するメリット
- 4.1. 複雑な法律の解釈と適用における専門家の役割
- 4.2. 失敗事例から学ぶ専門家活用の重要性
- 4.3. 初期相談から民泊開業までのステップ
- 5. まとめ:あなたの物件と目的に合った選択を
- 6. 関連リンク提案
民泊と旅館業の基本的な違い

民泊(住宅宿泊事業法)と旅館業法の定義と目的
「民泊」と一言で言っても、法律上は大きく分けて2つの方法があります。住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法、以下、「民泊」と呼称)に基づく「住宅宿泊事業」と、旅館業法に基づく「簡易宿所」です。
住宅宿泊事業法は、一般の住宅を活用した宿泊サービスを届け出をすることで提供できるようにした法律です。一方、旅館業法は旅館やホテル、簡易宿所など、宿泊を業として行う施設に適用される法律で規制の厳しさや必要な手続きが異なります。
それぞれの法律が生まれた背景と経緯
旅館業法は1948年に制定された古い法律で、主に公衆衛生の確保を目的としています。一方、民泊は2018年6月に施行された比較的新しい法律です。
住宅宿泊事業法が制定された背景には、Airbnbなどのプラットフォームの台頭による民泊の急増があります。訪日外国人観光客の増加に伴い宿泊施設が不足する中、空き家や空き室を有効活用する新たな宿泊形態として民泊が注目されました。しかし、無許可での営業や騒音トラブルなどの問題も発生したため、適切なルールを設けるために住宅宿泊事業法が制定されたのです。
旅館業法が公衆衛生や安全に重点を置いているのに対し、民泊は住環境との調和や観光需要への対応にも配慮した内容となっています。
営業方法から見る4つの重要な違い
1. 営業日数の制限と収益への影響
民泊と旅館業法の最も明確な違いの一つが、営業日数の制限です。民泊では、年間180日(半年)という営業日数の上限が設けられています。これは「住宅としての性質」を維持するためのものです。
一方、旅館業法の下での簡易宿所は、営業日数の制限がありません。365日フル稼働させることが可能です。この違いは収益計画に大きな影響を与えます。例えば一泊1万円で1年間稼働した場合:
・民泊:10,000円 × 180日 = 180万円(理論上の最大)
・旅館業法:10,000円 × 365日 = 365万円(理論上の可能性)
民泊で100%の稼働率を維持できれば理想ですが実際には難しい場合もあるでしょう。その点、簡易宿所では、価格を下げて集客ができる為、同地域で同グレードの民泊物件とを比較した際、簡易宿所が有利な傾向にあります。例えば民泊の稼働率が60%で1泊10,000円の物件の場合と、6,000円に値下げし90%の稼働率の旅館業法とは以下のような年間収益の差が生じます。
・民泊:10,000円 × 50% × 180日 = 90万円(空室率50%)
・旅館業法:6,000円 × 90% × 365日 = 197万円(値下げ、空室率が10%)
2. 立地条件と地域制限の違い
民泊では旅館業では禁止されている住宅地で宿泊業を行うことができますが、自治体が条例で民泊を制限できる「上乗せ規制」が認められています。例えば、住居専用地域での営業禁止や平日のみの営業制限などが条例で定められているケースがあります。
一方、旅館業法の簡易宿所は用途地域の制限を受けます。住居専用地域では原則として営業できません(例外もあります)。また、旅館業法では保健所の検査が必要なため、建築基準法上の用途や消防法との整合性も求められます。また、以下のように旅館業は近隣の環境にも配慮が必要です。
「学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校など)、児童福祉施設などの周囲約100mの区域内で、設置によりその施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがある場合、許可されません」
3. 必要な設備と安全基準の差
設備面での要件も大きく異なります。住宅宿泊事業法では、一般住宅としての設備基準が主で、必要最低限の安全設備(非常用照明器具、避難経路の表示など)が求められます。
一方、旅館業法の簡易宿所では、より厳格な基準が適用されます。例えば:
- 客室の最低床面積(33㎡以上、ただし自治体により緩和される場合も)
- 防火設備(自動火災報知設備、消火器など)
- 玄関帳場(フロント)の設置(自治体により不要な場合も)
- 定期的な水質検査
- 洗面設備、トイレの数に関する基準
このように、旅館業法では公衆衛生や安全に関してより厳しい基準が設けられています。
4. 管理体制と責任者の要件
住宅宿泊事業法では、住宅宿泊事業者(オーナー)自身が管理する「家主居住型」と「家主不在型」があります。家主不在型の場合には「住宅宿泊管理業者」への委託が必要です。
旅館業法の簡易宿所では、原則としてフロントなどの設置と責任者の常駐が求められます。ただし、ICTを活用した無人チェックインシステムの導入により、フロント設置義務が免除される場合もあります。
責任者の要件も異なります。住宅宿泊事業法では特定の資格は不要ですが、旅館業では防火管理者の資格が必要なケースがあります。また、どちらの場合も外国人宿泊者の記録(宿泊者名簿の作成・備え付け義務)は必須です。
鎌倉・葉山・逗子エリアの観光と宿泊事業の特性

地域特性と観光需要の傾向
鎌倉・葉山・逗子エリアは、首都圏からのアクセスの良さと豊かな自然環境、歴史的資産を有する人気の観光地です。特に鎌倉は年間約1,228万人(令和5年)の観光客が訪れる一大観光スポットで、民泊や宿泊施設の需要が認められるエリアです。
このような観光特性を持つエリアにおいて、住宅宿泊事業法に基づく民泊事業を検討する場合、同法で定められた年間営業日数の制限(180日以内)を考慮する必要があります。この制限の範囲内で効率的な運営を行うためには、宿泊需要の高い時期に営業を集中させることが一つの方策として考えられます。
地域別の規制と条例の特徴
神奈川県の鎌倉市、葉山町、逗子市では、住環境保全の観点から民泊に厳格な姿勢が見られます。実例として、鎌倉市で都内夫婦が民泊施設を開業したものの、近隣住民への説明不足や管理会社の対応不備から騒音・ゴミ問題で苦情が市に寄せられ、事業継続が困難になったケースがあります。
一方、旅館業法の簡易宿所は用途地域制限があり、住居専用地域では原則営業不可ですが、建築基準法の用途変更手続きで可能となるケースもあります。
鎌倉・葉山・逗子での民泊成功には、法令順守だけでなく、地域コミュニティとの関係構築や文化的差異への配慮が不可欠です。
成功事例に見る地域活性化の可能性
鎌倉・葉山・逗子エリアでは、古民家や別荘を活用した特色ある宿泊施設が人気を集めています。これらの成功事例には共通点があります。
例えば、築80年の古民家を改装した鎌倉の宿泊施設は、建物の歴史的価値を活かした設計と、地元の食材を使った朝食サービスで高い評価を得ています。この施設は旅館業法に基づく簡易宿所として営業していますが、初期の設備投資を抑えるために段階的に改装を進めた点が特徴です。
また、葉山の海が見える一軒家を活用した民泊は、SUPやカヤックなどのマリンアクティビティと連携したプランで差別化に成功しています。住宅宿泊事業法の下で年間180日の営業制限がありますが、週末と夏季に絞って営業することでほぼ満室の状態を維持しています。
これらの事例から、地域資源を活かした独自の価値提供が、営業形態に関わらず成功の鍵となっていることが分かります。単に宿泊場所を提供するだけでなく、地域との連携や体験価値の創出が重要なのです。
専門家のサポートを活用するメリット
複雑な法律の解釈と適用における専門家の役割
民泊と旅館業に関する法律や規制は複雑で、自治体ごとに異なる条例も存在します。専門家、特に民泊や旅館業に詳しい行政書士は、これらの複雑な法規制を正確に解釈し、あなたの状況に最適なアドバイスを提供できます。
民泊に強い行政書士に依頼するメリット
- 最新の法改正や条例の情報を把握できる
- 複雑な申請書類の作成を代行してもらえる
- 行政との交渉や調整を任せられる
- 物件の特性を踏まえた最適な営業形態の提案を受けられる
- 将来的なリスクも含めた総合的なアドバイスが得られる
特に、鎌倉・葉山・逗子エリアのような観光地では、地域特有の規制や慣習があります。地元の事情に詳しい専門家のサポートは、スムーズな開業と運営のための大きな助けとなります。
失敗事例から学ぶ専門家活用の重要性
民泊や簡易宿所の開業・運営における失敗事例の多くは、法令順守の不備や地域との関係構築の失敗に起因しています。
例えば、届出や許可申請の不備により営業開始が大幅に遅れたケースや、近隣住民とのトラブルにより営業継続が困難になったケース、民泊から旅館業を許可を取ろうとしても用途地域や近隣施設の問題で許可がとれないケースなど。
専門家のサポートを受けることで、このような失敗を未然に防ぐことができます。特に、以下のような場面では専門家の知見が重要です:
民泊に強い行政書士に依頼するメリット
- 物件購入前の事前調査段階
- 行政への届出・申請手続き
- 近隣住民への説明と同意取得
- トラブル発生時の対応
「自分でできる」と考えて専門家への相談を後回しにすると、取り返しのつかないミスにつながる可能性があります。初期段階からの相談が、長期的に見て効率的かつ経済的な選択となります。
初期相談から民泊開業までのステップ
民泊届出の流れ
お客さまに合わせた柔軟な対応で、最適な方法を共に考えサポートしていきます。
ヒアリング
まずは、無料相談をお申し込みください。
要件の確認
民泊予定の物件が要件にあっているか、民泊の届出が可能かを確認します。
お見積もり・ご契約
お見積もりを提示し、ご納得いただけたら契約を結びます。
工事・消防検査
台所や浴室、消防検査に必要な項目に該当する機器の設置や工事を実施します。
書類の収集と作成
消防検査をクリアできたら適合通知を受け取ります。
届出〜通知書交付
届出に必要な各種書類を届出書に添え、提出します。
2週間程度で通知書が発行されます。
営業開始
届出番号を掲示し営業を開始できます。
まとめ:あなたの物件と目的に合った選択を
民泊(住宅宿泊事業法)と旅館業法には、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。どちらが最適かは、物件の特性や立地、あなたの投資目的によって異なります。
・営業日数の制限なく最大限の収益を目指すなら旅館業法 ・初期投資を抑えて副業的に始めるなら住宅宿泊事業法 ・物件の立地条件や用途地域による制約も重要な判断材料 ・鎌倉・葉山・逗子エリアでは地域特性や条例にも注意が必要
最終的な判断は、専門家との相談を通じて行うことをおすすめします。法律や条例は変更される可能性があり、最新の情報を踏まえた判断が重要です。
私たちは、民泊と旅館業に特化した行政書士事務所として、鎌倉・葉山・逗子エリアでの開業をサポートしています。物件の調査から申請手続き、開業後のサポートまで一貫したサービスを提供しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
お気軽にお問い合わせください
関連リンク提案
内部リンク: ・「民泊届出の手続き方法と必要書類一覧」 ・「旅館業法に基づく簡易宿所の申請方法」 ・「民泊経営での税金と確定申告の注意点」 ・「鎌倉エリアの民泊経営成功事例」
外部リンク: ・観光庁「住宅宿泊事業法について」 ・厚生労働省「旅館業法について」 ・鎌倉市「住宅宿泊事業の届出について」 ・国土交通省「民泊制度ポータルサイト」