はじめに

鎌倉で民泊(住宅宿泊事業法)を運営しているオーナー様から、最近こんなご相談が増えています。

「180日の営業日数制限が物足りない。もっと稼働させたい」

この悩みを解決する選択肢が、旅館業法に基づく簡易宿所営業許可です。民泊(住宅宿泊事業法)とは異なる法律・異なる手続きになりますが、取得すれば年間365日の営業が可能になります。

本記事では、鎌倉市で簡易宿所を始める際に必ず確認すべき用途地域・構造基準・費用の目安を、当事務所が扱ってきた鎌倉エリアの実務知見も交えて解説します。

この記事を読むとわかること

  • 民泊(住宅宿泊事業法)と簡易宿所(旅館業法)の違い
  • 簡易宿所なら民泊の180日制限を超えて年間365日営業できること
  • 鎌倉市内で簡易宿所が始めやすいエリアと、できないエリア
  • 鎌倉市ならではの手続き上のメリット
  • 簡易宿所を始めるためにかかる費用の目安と、許可までの申請の流れ

簡易宿所と民泊(住宅宿泊事業法)の違い

まず大前提として、この2つはまったく別の制度です。

項目民泊(住宅宿泊事業法)簡易宿所(旅館業法)
手続きの性質届出制許可制
営業日数年間180日以内制限なし(365日可)
客室総床面積面積要件あり33㎡以上(定員10人以下は3.3㎡×定員)
手続きの難易度法的な制約が緩い構造・設備基準が厳格

「簡易宿所」という名称から、旅館やホテルに比べて簡単な手続きで始められると誤解されがちですが、簡易宿所も旅館業法上の営業形態の一つであり、営業には都道府県知事等の許可が必要です。近年広まっている民泊(住宅宿泊事業)とは、いくつかの点で異なります。届出のみで開業できる民泊に対し、簡易宿所の許可申請では保健所による現地検査などが行われるため、審査基準は厳しくなります。しかしその分、民泊に課される年間180日という営業日数の上限から解放される点が、簡易宿所の大きなメリットといえます。

鎌倉市で簡易宿所を始める前に確認すべき用途地域

簡易宿所(旅館業法)は、民泊(住宅宿泊事業法)よりも用途地域の制限が厳しい点に注意が必要です。民泊は住居専用地域でも営業できるケースがありますが、旅館業法に基づく簡易宿所は、第一種・第二種低層住居専用地域など住居専用系の用途地域では原則として営業できません。

鎌倉市内で言えば、

  • 鎌倉駅周辺:商業地域が中心で、比較的制限が少ない
  • 北鎌倉エリアや七里ガ浜など:第一種低層住居専用地域が多く、住居専用地域での簡易宿所は原則不可

というように、エリアによって可否がまったく変わります。物件を検討する際は、鎌倉市都市計画課(電話:0467-61-3408)で用途地域を確認することが最初の一歩です。また、鎌倉市は歴史的景観保全のため市街化調整区域や地区計画による建築規制がかかっている地域も多く、用途地域上は営業可能でも、別の規制で実質的に難しいケースもあります。この点は物件ごとに個別確認が必須です。

家を購入または新築して簡易宿所を始めようと思っている方は、必ず用途地域やその他条例、協定等による規制がないかを確認しましょう。

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鎌倉市ならではの運用上の特例

簡易宿所営業許可の手続きは、鎌倉市・逗子市・葉山町のエリアでは神奈川県鎌倉保健福祉事務所(環境衛生課)が窓口になります。

一般的には、旅館業への用途変更にあたって建築基準法上の検査済証の提出を求められることが多いのですが、鎌倉市では旅館業申請時に検査済証の提出を求めない運用が取られています。また、建物登記上の種類が「居宅」のままでも申請が可能です。これは古い戸建てや古民家を活用したいオーナー様にとって、実務上の負担を軽くする重要なポイントです(ただし運用は変更される可能性があるため、着工前に必ず鎌倉保健福祉事務所への事前相談で最新の取り扱いを確認してください)。

ポイント解説

令和8年5月28日、厚労省・国交省の連名通知で旅館業許可の実務が変わりました。住宅から旅館・簡易宿所への用途変更では、200㎡以下でも建築士による建築基準法の適合証明書の提出が必須とする通知が出されました。詳しくは下記の記事をご覧ください。

なお、国の制度としても、床面積200㎡以下の用途変更であれば建築確認申請そのものが不要になる緩和措置があります。ただし手続きが不要になっても、建築基準法・消防法への適合義務自体は継続するため、維持保全計画の策定や定期点検の実施責任者を決めておくとよいでしょう。特に消防設備の点検は半年に一度、報告は1年に一度決められているため注意が必要です。

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構造・設備基準のポイント

簡易宿所には、次のような基準が定められています(神奈川県条例による)。

4つのポイント

  • 客室総床面積は33㎡以上(定員10人以下の場合は3.3㎡×定員でも可)
  • 寝台を置かない客室は3.3㎡につき1人、寝台を置く客室は4㎡につき1人が定員の上限
  • ICT機器による本人確認・鍵の受け渡しが可能であれば、玄関帳場(フロント)の設置は免除される

なお、神奈川県旅館業法施行条例には遊離残留塩素濃度や貯湯槽の温度管理といった細かな水質管理基準もありますが、これは温泉や循環式浴槽(湯を溜めて濾過・再利用する設備)を設置する施設が対象です。一般的な簡易宿所のように、蛇口から出る水道水(給湯)をその都度使い切り、使用後にそのまま下水道へ排水するユニットバス形式であれば、これらの水質検査・濃度維持の基準は基本的に対象外です。循環設備の有無によって扱いが変わるため、該当するか不安な場合は着工前に保健所へ確認しておくと安心です。

消防法上の対応

簡易宿所には原則として非常用照明の設置義務があります。ただし床面積200㎡以下の施設では告示改正により一部居室の設置義務が緩和されており、コストを抑えられる余地があります。また、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が求められる場合があるほか、カーテンや絨毯などは防炎物品を使用する義務があります。実際の設置基準は物件の規模・構造によって変わるため、着工前に消防署への事前相談を行い、消防法令適合通知書を取得する流れになります。

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申請費用とその他発生する費用の目安

神奈川県内で簡易宿所営業許可を申請する場合の手数料は22,060円です。これに加え、

  • 図面作成・書類作成費用 5万~20万円程
  • 保安設備の設置費用 10~50万円程
  • 住宅設備の改修費用 数10万~数100万円程
  • 行政書士への依頼費用 25万円~(弊所設定額)

古い物件の場合、建築時の図面が現況と異なっていたり、増改築部分が未登記のままになっていたりするケースも少なくありません。図面がない場合は図面の作成から始める必要があり、建築士等への依頼が発生すれば、その分費用がかさみます。

保安設備には、消防法で定められているものと建築基準法で定められているものがあります。非常用照明の設置は建築基準法、それ以外(避難誘導灯・消火器・自動火災報知設備等)は消防法が関係することが多く、非常用照明や避難誘導灯の設置には電気工事士による施工が必須です。

住宅設備について、浴室にシャワーと浴槽はあっても洗面設備(洗面台等)がない物件も見受けられますが、この場合は設備要件を満たさないため許可が下りません。水回りの設備入れ替え・新設は高額な費用がかかることがほとんどです。また、電力量が足りない物件は単相2線から3線への200Vへの変更が必要であったり、多くの見えないリスクがあります。

これら費用は物件の状態によって大きく変動するため、事前相談の段階で概算をご確認いただくことをお勧めします。

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申請の流れ

  1. 物件選定・用途地域の確認(鎌倉市都市計画課)
  2. 保健所・消防署・建築指導課への事前相談(図面持参)
  3. 消防設備等の設置・衛生設備の改修工事(業者へ外注)
  4. 消防法令適合通知書の取得(消防署の現地検査)
  5. 旅館業許可の本申請(鎌倉保健福祉事務所)
  6. 保健所の立入検査を経て許可証交付
  7. 学校等への意見照会(付近100mに学校等がある場合)
  8. 営業開始
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まとめ

簡易宿所(旅館業法)は、民泊の180日制限を超えて事業を伸ばしたいオーナー様にとって有力な選択肢です。一方で、用途地域の制限は民泊より厳しく、構造・設備基準も細かく定められています。

行政書士は、こうした煩雑な法令確認や関係部署との協議、書類作成、申請手続きの代行を行うことが法律で認められています。依頼主様には弊所がご案内する書類をご準備いただくだけで、時間と労力を大幅に削減いただけます。

弊所では鎌倉・横須賀・三浦市を中心に、民泊・簡易宿所の許認可手続きを積極的に承っております。電気工事会社、不動産会社、建築士、管理業者といった許認可取得に欠かせない専門家とも提携しており、ワンストップでのサービス提供が可能です。

これまで簡易宿所や民泊を検討されたことがなかった方——例えば、相続した家を有効活用したい個人のお客様や、空室を埋めたい不動産業者様も、ぜひご検討ください。


参照一次情報:旅館業法、旅館業法施行令、神奈川県旅館業法施行条例、国土交通省・建築基準法改正リーフレット、鎌倉市都市計画課・鎌倉保健福祉事務所公開情報

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